神尾観鈴 Full Scracth '02年 10月27日


 今、何故観鈴かと言われても特に狙った物はないです。 かろうじて言えばPS2版が発売され、少しはタイムリーかも知れませんが...。

 最近萌えキャラというのも無くて、あえて好きといえば版権の降りないブロッコリー系だったりして、特にコレと言って作りたいという物はなしという状態です。 そんな時にたまたまAIR服のコスプレを見る機会があって、いろいろ考えさせられる物がありまして...。 じゃ、作ってみるかと言うことにしました。 つまりまぁキャラクターに惹かれたのではなく、服に惹かれたわけです。

 AIRの服というのは非常に趣深いと思います。 この手の萌えキャラが着ている服というのは原色バリバリのド派手な衣装だったりするのですが、この服は黒。 原作が夏をテーマにしているのにも関わらず、そのイメージとは正反対と思える色がメインとなっているのです。 しかもその黒が占める面積は異常に多く、しかもワンピースで特に凝った部分もないという、制服としては他に類を見ないほどの地味さ。 まぁ、黒が使われている直接の原因は、この服がシスター服をモチーフにデザインされているからだと思いますが、それにしたってこの作品とキリスト教はなにも関係がないですわな。 ハッキリ言って不自然だと思います。

 しかし、その地味さ故に面白い部分もあって、その黒一色のワンピースにどうディテールを付けるのかという部分で、同人作家や原型師の個性が表れやすく、いろんな同人作品を見ているだけで楽しい、面白い服だと思うのです。 また、それに加え、エリの形状の解釈や、観鈴の髪型も実に人によって不安定で、これも描き手、作り手の個性が出やすく、面白い題材です。 では、この題材を使って、私も1つ作品を作ってみようではありませんか。 自分の作りたい形状で。

 とは言っても、観鈴を出すというのは自分的には色々と根の深い問題もあります。 らくがき塗料箱からは1度出している作品ですからね。 私から出し直す形になるのは色々とアレでアレな感じでした。 とは言え、版権の取りやすい物を作っておきたいというねらいもあるし、他に選択肢は無かったのです。

 さて、AIRは知名度の高い作品ですから、観鈴のフィギュアも数多く出ています。 みなさんはどの観鈴を思い浮かべますか? 私はやはり雄猫堂さんのヤツを思い浮かべます。アレはシワの付き方が結構個性的で、造形的面白さはあるのですが、あの不自然さは私に少し違和感を感じさせます。 次に思い浮かべるのは猫の小判さんの作品。 良くまとまった作品だと思いますが、方向性としては私の目指すところとは違います。

 その他の作品はというと今ひとつAIRの服の単調さを埋め切れていないような物ばかりでして、私を満足させるような物はありませんでした。 だからこそ、作る意味がある...と言いたいところですが、まぁ私の方向性は今の市場とは別方向に向いていると思われるので、売り上げについては期待してません。 いやむしろ売り上げを無視したいからこそこんな競争率激しいキャラを選んだのですから、それはよいのです。 重要なのは、作っているウチに自分らしさを見失わない事です。


 というわけで、まずは方向性をしっかり定めることから始めました。 ワンフェスが終わってから1週間ほど連休がありました。 通常なら、この休みを使ってファンドをこね始めますが、今回は作る前に、できるだけ細部に至るまで良く検討する事をしました。 作りたい物が何であったのか、紙に書き留め、イメージを絵にし、記録として残しておきます。 作りながら考える部分は極力抑え、まずは先に考え、あとは一気に手を動かす...。 という事が出来るようにするための配慮です。 こうすることで、考えがまとまる前に時間切れになってしまう平日の造形を完全に作業化することが出来、ぶつ切りの時間しかできなくても、前に進むことが出来ると思ったのです。

 で、出来たスケッチはこんなの。 「立体」として捉えた絵を描き記しています。 一部紹介しましょう。

 コンセプトは「風と空が見えるフィギュア」。 きちんと整ったシワや髪はあり得ず、風が服や髪をかき乱す様を表現することが今回の目標としました。

 サイズは1/7としました。 これも以前からやりたかった事の1つ。 サイズの大型化します。

 C3が終わった頃からやっとファンドをこね始めました。 それからウダウダやって2ヶ月。 一応現在こんな感じ。 版権申請があるので、全体像がつかめるところまで大急ぎです。 しかしやはりスタートが遅かったせいか、版権申請としては過去最も完成度が低いです。 通常ならここでサフを吹きますが、それもしたくないので、材質の違いによる色違いを抑える目的で、ファンド部分を木部用パテの色の合わせて塗装しました(肌部除く)。 これなら作業を最小限に抑えられます。 まぁ、今回はビジュアルアーツだから版権は絶対大丈夫という甘えもあるのですが...。

 しかし忙しいぞ。 もっと早く帰りたい...。 3食で最もまずいと思っていた会社の弁当が、最近では3食で最もまともな飯になっている事に気付く。 アレが自分の生命線なのか。 とは言え冷蔵庫とキッチンを持たない私にどうしろというのだ。


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